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2019年12月20日

本を読みましょう ブラッカムの爆撃機

“本を読みましょう”の第二弾は、ロバート・ウェストール著の児童小説、ブラッカムの爆撃機(岩波書店)です。
以前職場の人に薦められて地元の図書館で借りたところ非常に面白かったので、ボッコフで見つけた時にこれ幸いと購入しました。
本を読みましょう ブラッカムの爆撃機

表題のブラッカムの爆撃機の他に、2つの短編小説が収録されています。
更にカバーに宮崎駿編とあるように、この本にはロバート・ウェストール氏を敬愛する宮崎駿氏が24ページものマンガによるコラム「タインマスへの旅」を寄稿しています。
本編もとても面白いですが、本編に対する序章ともいえるこのコラムも珠玉の一編ですね。
本を読みましょう ブラッカムの爆撃機

コラムは宮崎駿氏得意の細かい書き込みが、これでもかと紙面を埋めています。
しかし小説の内容を補完し、より理解する上でも非常に重要なコラムだと云えます。
本を読みましょう ブラッカムの爆撃機

物語はRAF(英国空軍)のビッカース ウェリントン爆撃機 C号機のクルーを中心に描かれ、その一員である通信士を狂言回しとして進行していきます。
児童向け小説の体裁を取っていますが、設定や描写などはコアなミリタリーマニアの鑑賞にも十分耐えうる内容です。

爆撃機としては当時すでに2線級の性能だった双発のウェリントン。
昼間にノコノコとドイツ領内などに赴いたらドイツ空軍の餌食になるのは確実なので夜間無差別爆撃の任に就きます。
それを迎撃するオンボードレーダーを搭載したドイツ夜間戦闘機との死闘が、通信士の語り口によって描かれます。
夜戦型ユンカースJu88を返り討ちにするエピソードでは、敵味方でキャノピー越しに裏Vサイン(クタ〇レのサインですね…)の応酬があったりして退屈しません。
本を読みましょう ブラッカムの爆撃機

戦闘による凄惨な場面も出てきますが、それもまた戦争の残酷な一面。
管理人が小学生の時分、学校の図書館で原爆の写真集を見た時と同様の衝撃を受ける子供もいるかもしれません。

前半はリアルな戦記物なんですが、子供がそろそろ飽きて来るであろう後半にかけて、ある出来事が起こります。
それを境に英国らしく物語が徐々にミステリー風味を帯びてきて、更に進むと(稲川淳二氏に読んで欲しいような)スリラーそのものの展開に…。
本を読みましょう ブラッカムの爆撃機

この展開ならば子供も飽きないだろうし、最後はハッピーエンド的に終わるので子供心にも救われるような結末でしょう。
この小説、決して戦争を美化したり、声高に反戦を叫ぶわけでもありませんが、淡々と描かれる戦争の日常は子供心には決して楽しそうだとか、ましてやカッコよくは映らないでしょうね。

しかし子供の頃からこんなマニアックな小説に触れていたら、人生観が変わってしまう子も少なからずいるでしょうなぁ…。
本を読みましょう ブラッカムの爆撃機

では、良いお年を~。


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